生徒主体の授業をより良くするための本
本書は、生徒の自主性を重視することに異を唱えているのではない。『教えることの復権』というタイトルからは、生徒の自主的な学習活動をさせるよりも教師が黒板の前に立ってしっかり説明することが大切、という主張が述べられているような印象を受けるが、そうではなかった。私は、生徒が聞いていなくても、理解できずにいても、まったく構わずに教師が一人で喋りつづけるというスタイルの授業の効果に疑問を持っていた。そのため、自分が教師となってからは生徒に自分の意見を書かせる、発表させる、話し合わせる、といった自主的な活動を重視する授業をし、その効果も感じていた。だから本書のタイトルを見たときには反感を持った一方、もしかしたら自分は重要な過ちに気づかずにいるのかと不安も感じた。 読んでみると、本書は生徒一人一人の自主的な活動を否定するどころか、むしろ重視している。ただ、そういう授業で絶対に忘れてはいけないこと、そして今、現場の教師が忘れそうになっていることを指摘してくれているのだ。たとえば以下のような大村はまのことばである。 「自由にやってごらんと言って、先生はただ見ているだけ。これがいいのではないかとか、こんなことを考えてみたらどうかとか、はっと気づくようなことを言えるのが教師ではないの。」 「よく読みなさいと言う。そこまではやるけれども、読んでいるとき読む力がぐっと伸びることをなんにもしてやらない。書きなさいとも言いますね。でも、書いているときにその人がいい書き手になるコツを教えない。」 実に耳が痛かった。しかし、本書を読んでから、自分の授業は変わったと思う。そしてもっと良い授業に変えていけると思っている。 今、生徒主体の授業をしている教師の皆さんは、本書を読んで自分の教授法が否定されるのではなく、改善できる方法を見つけられるはずである。
目頭があつくなりました
大村はま先生がなくなったニュースを聞き、先生にはじめて興味を持って、この本を手にしました。 読み進めていく中で、何度か目頭が熱くなりました。「こういう授業をうけたかった」「そうだ、これこそ知的な自立した学習者だ」。何度も気持ちが揺さぶられ、本文中で授業の様子が紹介されるたびに、先生の授業を受けられた方をうらやましく感じました。 ともすれば知識と情報の区別が曖昧になるとともに、その基本となる言葉の用い方、伝え方すら希薄になっている現代。仕事として普段いわゆる「教育」や「言語」に携わっていない方でも、普段の生活で「教える」ことの意味を捉えなおすきっかけになるのではないかと思います。 示唆や反省に富んだ本当の意味での「先生からの励まし」のような本だと感じました。
教えられないからといって、教えることを否定してはいけない
国語教育研究家大村はまが亡くなったというニュースを聞いた。ショックだった。 この本はその大村はまを交えての対談がかなりの部分を占めている。それを、授業を実際に受けた苅谷夏子と、その夫で教育学者の剛彦の書いた文章が囲む構成になっている。大村はまとはどんな人であったのか、どんな授業を行っていたのか、それは今どのような視点で語られるべきなのか、それらが一度にわかる。コンパクトで安価で、とてもお買い得と思える。 「大村はま」とは何者か、それが知りたかったら、この本が一番の近道。その上で、彼女自身が書いた文章や報告などを読むと理解も早いだろう。 教えられる教師に教えられる幸せ・わくわく感を感じた生徒が増えることを願う。
教え子との対談
大村はま先生とその教え子である苅谷夏子氏との対談集である。夏子さんは、「知的複眼思考法」で有名な苅谷剛彦氏の妻。夫の剛彦氏も、この本の最終章を担当している。 30年以上も前の石川台中学校での単元学習が再現される。しかし、それは単なる思い出話ではない。夏子さんの当時の学習記録に基づき、教えたことと、学んだことが、お二人の言葉で確認されながら整理されていく。大村先生も教師冥利に尽きるのか、とても満足そうで、また、言葉の歯切れがよくて若々しく、読んでいる方も元気になった。 夏子氏が、中学生だった自分とクラスメートたちのことを「大村教室の生徒は、学習者としてとても自覚的だった」と述べているが、これは正に、今一番大切なことで、一番欠けていることでもある。 「教えるということ」「教師の役割」「国語教育」について、目を覚まされる一冊である。
教えるということ?
教えるということに疑問を持っている人にまたは教師を目指している人にぜひ読んでほしい本です。 私は「学び」は大切だと考えています。しかし、ここでの「教えること」と「学び」は決して対立するものではありません。ぜひ自分で読んで確かめてみてください。
筑摩書房
新編 教えるということ (ちくま学芸文庫) 日本の教師に伝えたいこと (ちくま学芸文庫) 優劣のかなたに―大村はま60のことば 教師大村はま96歳の仕事 灯し続けることば
|